三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.49
2010/10/10 (Sun) 00:00:00
※10/10までこの記事を頭に出しておきます※
三国恋戦記にて参加。プチオンリー「三国恋花」参加。
■東2ホール エ18b
三国クジも微少ながら申請させていただきました。
■頒布物
「零陵香」 玄花 コピー/A5/28P ¥300
ただイチャイチャしてるだけ。
「碧瑠璃の波紋」 公花 コピー/A5/48P ¥500
都督の嫁取り物語。(嘘)
「花に嵐」 文花 コピー/A5/8P 無料配布
猫と花と文若と。いつものノリですよ……
以上、確定です。どうぞよしなに!
三国恋戦記にて参加。プチオンリー「三国恋花」参加。
■東2ホール エ18b
三国クジも微少ながら申請させていただきました。
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「零陵香」 玄花 コピー/A5/28P ¥300
ただイチャイチャしてるだけ。
「碧瑠璃の波紋」 公花 コピー/A5/48P ¥500
都督の嫁取り物語。(嘘)
「花に嵐」 文花 コピー/A5/8P 無料配布
猫と花と文若と。いつものノリですよ……
以上、確定です。どうぞよしなに!
どんなトコを抜き出せばいいのやら悩んだので(……)適当に抜いてみました。
【 零陵香 】 玄花
「無理、しないでくださいね」
言ったところで詮無きこととは思えど、言わずにはいられない。もっと役に立てたら、きっといたわりの重みも違ってくるだろうに。
わずかに唇を噛んでから無防備な寝顔を見る。ひとの気配には聡いはずだが、机を挟むだけの距離であっても醒めないのは、それだけこころを許されている証拠にはならないだろうか。都合の良い考えに思わず花の顔が緩んだ。
(ちょっとだけなら、いい、かな)
大きな音を立てないようにそっと荷物を置き、机を回り込んで寝ている玄徳に近づく。すぐ脇に立ち、上体を屈めて額を肩に触れさせた。それでも目覚める気配はない。久方振りに感じた布越しの体温に花はほっと安堵の息をつく。
頑張りたいと告げる都度、何もしなくていいと繰り返されてしまうけれど、もちろんそれに甘えるつもりなどなく、自身に許すつもりもない。彼の下にいる皆と同様に彼の志を支える一翼になりたい。
こちらの世界に来る原因ともなり、玄徳の助けとなれる策を与えてくれた本を失い、ただのちっぽけな娘となった己にどれだけのことができるようになれるかは不明だが、それはこの世界で生きていくと決めたときから、――このひとの力になりたいと思ったときから願ってきたこと。
何もかもが怪しいだけの小娘を信じ、そのこころを貫いてくれた彼の気持ちへ返す花のこころ。
「私、もっと頑張りますから」
花はそんなつぶやきを残してから離れた。
声が直接聞こえなくても届くように、行動で示せばよい。そのためにはやはり学び覚えることが先決だ。彼女は眠る玄徳の横顔を見つめ、そこに微笑みをこぼしてから背を向けた。
「――っ!?」
不意に腕を取られて息を呑む。髪を乱して振り返ると、今まで何の反応もなく、完全に眠りに落ちていただろうはずの玄徳が目を眇めて花の顔を見上げていた。口角が緩く上がっている。
「げ、玄徳さん……!」
起きていたのかと震える声で問いかければ、彼は笑って肯いた。掴んだ手を離して息をつく。
彼女は改めて身を翻して玄徳に向き合った。彼の行状にむくれるも、自分の行為の恥ずかしさが 勝って玄徳の顔は直視できなかった。
「仙女がお前の姿を借りて日々の労いをしてくれているものと思ったんだが」
何もせずに離れていくものだから、つい。
悪びれずにそんなことを言う君主は、やはり穏やかに笑ったままで机上に肘をついた。途端に花は首から顔からと真っ赤に染まって俯いてしまう。
「あ、あの、師匠からの書簡を届けにきたんですけど、返事がなかったので……。勝手に部屋へ入ったりしてすみませんでした」
「それは構わない。お前でなかったらちゃんと起きた」
背もたれに身体を預け、玄徳は彼女に向けて手を差し伸べた。わずかに躊躇したのち、花はそこへそろりと指先を触れさせる。硬い皮膚。こうして部屋にこもって筆を握っているのでなく、戦場で刀剣を振るっていた時間のほうが長かったのだろうことを思わせる。
彼女はゆっくりと瞬き、それから口を開いた。
「それは、私じゃなかったらきちんと返事をしたっていうことですか?」
「まあ、そういうことになってしまわなくもないんだが。――待て、花。そう怒るな」
触れていた手を引っ込め、ぷくりと頬を膨らませた彼女に慌てて玄徳は立ち上がり、踵を返した痩身を簡単に片腕で引き寄せてその胸中に収めた。戒めのような腕を花が引き剥がすかのようにつかみ取ったがもちろん敵うはずもない。
「……お前と二人になれる時間がほしかったんだ。伏龍の弟子を相手どるに拙い策だとは思ったが、上手くいった」
眼下にあるつむじに唇を寄せながらそうつぶやけば、抱きしめた身体が瞬時に強ばった。彼女の耳や首筋が朱になっているのを見て密やかに笑う。
彼女は孔明の使いといって部屋にやってくるが、用事が済めば早々に引き取ってしまう。交わす言葉などささやかなもので、それも事務的なやりとりが主になり、満足いくものになりなどしない。彼女との想いが通じている今となってはなおさらだ。
------------------------------------------------
【 碧瑠璃の波紋 】 公花
「ち、父上には、お初にお目にかかります!」
「……は?」
「ぼ――わたしは顕といいます。後ろのは妹の瑶です。あ、あの、母上から、ち、父上のところへ行くよう言われたので参りました!」
子供特有の高らかな声が道に空にと響き渡ると、伯言は笑みを深め、公瑾の細い瞳が驚愕によって大きく見開かれていく様を眺めた。
「花様……!」
その隣では、目を丸く、大きく見開いたまま倒れかかっていた花を侍女が支えていた。瞬きひとつしないまま、じっと子供を凝視して、不安な面持ちで覗き込んだ公瑾を一切見ようとはしなかった。
「大事ございませんか?」
「は、はい。すみ、ません」
「花」
まるでいま気がついたというように顔を動かして公瑾を見る花の瞳には何の感情も見受けられない。衝撃が強すぎたのか、思考という思考がすべて吹き飛んだかのようだ。
「――花」
公瑾の手が花の華奢な肩に触れた。そして互いに口をうっすらと開きかけたのを見止めたとき、それを遮るように奇怪な音が鳴った。瞬きをしだした花の目が少女に移る。音は腹をさする少女のものだったのだろう。
「おなかすいた……」
兄たる男児を見上げ、その袖を引いて悲しげに訴える幼女に、この場の空気をわかってくれと責めるのは酷だろうか。
伯言が小さく噴き出したのを切欠に、侍女にもたれ掛かって立っていた花が動きを見せた。公瑾の伸ばした手も届かず、彼女は少女の前で膝を折る。
「朝ご飯、食べてないの?」
「うん。あにうえも食べてないよ」
「そっか。それじゃ、私もまだだから一緒に食べよう」
「うん!」
少女が元気に素直に頷くと、握っていた袖を離して花に抱きついた。
「そっちの、ええと、ケン君? 君も中に入って一緒にご飯を食べよう。――二人分の追加って大丈夫ですか?」
「は、はい。仰せとあらばすぐにでも……ですが」
「それじゃお願いします。さ、行こうか」
「待ちなさい!」
まるで己の娘のように女児を抱え、男児の手を引いて身を翻した花の背後に、切羽詰まった公瑾の声がかかった。子供の存在と花の態度への困惑と、様々な感情の入り乱れた表情は、沈着冷静を常としている彼にしては珍しく、傍観していた伯言をして色惚けってすごいなあと言わしめたほどだった。
辛うじて踏み出した一歩は、半身だけを返した花の無感動な視線によってその場に縫い止められてしまう。
「そうだ。二人とも、お父さんはこれからお仕事なんだから、いってらっしゃいの挨拶をしなくちゃ」
乾いた口は彼女の名を音に乗せようとして開かれたのだが、そこへ被さるように、形ばかりの笑みを面のように張り付けた花の言によって掻き消され、力一杯の嫌味を込めて強調した「お父さん」の単語に、公瑾の口端がひきつった。
「いってらっしゃいませ、父上」
「いってらっしゃい、ちちうえ!」
畏まって頭を垂れる男児に、にこやかな笑みで手を振る女児。一見、家族に見送られての出仕とも取れるが、母役の花の瞳に浮かぶ刺々しい光がそんな穏やかな光景を打ち壊している。公瑾には見せたことのない、――見たことのない、恋人から初めて向けられる拒絶のこころ。
「は――」
「いってらっしゃい、公瑾さん、伯言さん。お仕事、がんばってきてくださいね」
「は。ありがとう存じます」
伯言は呆然と立ち尽くす公瑾の脇にて拱手し、花へ深々と礼を取る。
語調こそやわらかく告げた花は今度こそ、二人の子を連れて躊躇せずにくるりと踵を返し、邸の中へ入ってしまった。
そして門扉は閉じられる。邸の主たる公瑾へ礼を取り、腰を折った門人と侍女の姿のみを視界に残して。
「都督、諦めて早く行きましょうよーぅ。昨夜遅くに、仲謀様と子布殿が派手にやり合っちゃったから、都督にまとめてもらわないと皆が困るんですよねぇ」
愛しいひとへと伸ばした手が虚しく空を掴む。
脱力したままのろりと身を転じた公瑾は、迎えの車を示した伯言をこの上もない恨みを込めた目で睨みつけた。
【 零陵香 】 玄花
「無理、しないでくださいね」
言ったところで詮無きこととは思えど、言わずにはいられない。もっと役に立てたら、きっといたわりの重みも違ってくるだろうに。
わずかに唇を噛んでから無防備な寝顔を見る。ひとの気配には聡いはずだが、机を挟むだけの距離であっても醒めないのは、それだけこころを許されている証拠にはならないだろうか。都合の良い考えに思わず花の顔が緩んだ。
(ちょっとだけなら、いい、かな)
大きな音を立てないようにそっと荷物を置き、机を回り込んで寝ている玄徳に近づく。すぐ脇に立ち、上体を屈めて額を肩に触れさせた。それでも目覚める気配はない。久方振りに感じた布越しの体温に花はほっと安堵の息をつく。
頑張りたいと告げる都度、何もしなくていいと繰り返されてしまうけれど、もちろんそれに甘えるつもりなどなく、自身に許すつもりもない。彼の下にいる皆と同様に彼の志を支える一翼になりたい。
こちらの世界に来る原因ともなり、玄徳の助けとなれる策を与えてくれた本を失い、ただのちっぽけな娘となった己にどれだけのことができるようになれるかは不明だが、それはこの世界で生きていくと決めたときから、――このひとの力になりたいと思ったときから願ってきたこと。
何もかもが怪しいだけの小娘を信じ、そのこころを貫いてくれた彼の気持ちへ返す花のこころ。
「私、もっと頑張りますから」
花はそんなつぶやきを残してから離れた。
声が直接聞こえなくても届くように、行動で示せばよい。そのためにはやはり学び覚えることが先決だ。彼女は眠る玄徳の横顔を見つめ、そこに微笑みをこぼしてから背を向けた。
「――っ!?」
不意に腕を取られて息を呑む。髪を乱して振り返ると、今まで何の反応もなく、完全に眠りに落ちていただろうはずの玄徳が目を眇めて花の顔を見上げていた。口角が緩く上がっている。
「げ、玄徳さん……!」
起きていたのかと震える声で問いかければ、彼は笑って肯いた。掴んだ手を離して息をつく。
彼女は改めて身を翻して玄徳に向き合った。彼の行状にむくれるも、自分の行為の恥ずかしさが 勝って玄徳の顔は直視できなかった。
「仙女がお前の姿を借りて日々の労いをしてくれているものと思ったんだが」
何もせずに離れていくものだから、つい。
悪びれずにそんなことを言う君主は、やはり穏やかに笑ったままで机上に肘をついた。途端に花は首から顔からと真っ赤に染まって俯いてしまう。
「あ、あの、師匠からの書簡を届けにきたんですけど、返事がなかったので……。勝手に部屋へ入ったりしてすみませんでした」
「それは構わない。お前でなかったらちゃんと起きた」
背もたれに身体を預け、玄徳は彼女に向けて手を差し伸べた。わずかに躊躇したのち、花はそこへそろりと指先を触れさせる。硬い皮膚。こうして部屋にこもって筆を握っているのでなく、戦場で刀剣を振るっていた時間のほうが長かったのだろうことを思わせる。
彼女はゆっくりと瞬き、それから口を開いた。
「それは、私じゃなかったらきちんと返事をしたっていうことですか?」
「まあ、そういうことになってしまわなくもないんだが。――待て、花。そう怒るな」
触れていた手を引っ込め、ぷくりと頬を膨らませた彼女に慌てて玄徳は立ち上がり、踵を返した痩身を簡単に片腕で引き寄せてその胸中に収めた。戒めのような腕を花が引き剥がすかのようにつかみ取ったがもちろん敵うはずもない。
「……お前と二人になれる時間がほしかったんだ。伏龍の弟子を相手どるに拙い策だとは思ったが、上手くいった」
眼下にあるつむじに唇を寄せながらそうつぶやけば、抱きしめた身体が瞬時に強ばった。彼女の耳や首筋が朱になっているのを見て密やかに笑う。
彼女は孔明の使いといって部屋にやってくるが、用事が済めば早々に引き取ってしまう。交わす言葉などささやかなもので、それも事務的なやりとりが主になり、満足いくものになりなどしない。彼女との想いが通じている今となってはなおさらだ。
------------------------------------------------
【 碧瑠璃の波紋 】 公花
「ち、父上には、お初にお目にかかります!」
「……は?」
「ぼ――わたしは顕といいます。後ろのは妹の瑶です。あ、あの、母上から、ち、父上のところへ行くよう言われたので参りました!」
子供特有の高らかな声が道に空にと響き渡ると、伯言は笑みを深め、公瑾の細い瞳が驚愕によって大きく見開かれていく様を眺めた。
「花様……!」
その隣では、目を丸く、大きく見開いたまま倒れかかっていた花を侍女が支えていた。瞬きひとつしないまま、じっと子供を凝視して、不安な面持ちで覗き込んだ公瑾を一切見ようとはしなかった。
「大事ございませんか?」
「は、はい。すみ、ません」
「花」
まるでいま気がついたというように顔を動かして公瑾を見る花の瞳には何の感情も見受けられない。衝撃が強すぎたのか、思考という思考がすべて吹き飛んだかのようだ。
「――花」
公瑾の手が花の華奢な肩に触れた。そして互いに口をうっすらと開きかけたのを見止めたとき、それを遮るように奇怪な音が鳴った。瞬きをしだした花の目が少女に移る。音は腹をさする少女のものだったのだろう。
「おなかすいた……」
兄たる男児を見上げ、その袖を引いて悲しげに訴える幼女に、この場の空気をわかってくれと責めるのは酷だろうか。
伯言が小さく噴き出したのを切欠に、侍女にもたれ掛かって立っていた花が動きを見せた。公瑾の伸ばした手も届かず、彼女は少女の前で膝を折る。
「朝ご飯、食べてないの?」
「うん。あにうえも食べてないよ」
「そっか。それじゃ、私もまだだから一緒に食べよう」
「うん!」
少女が元気に素直に頷くと、握っていた袖を離して花に抱きついた。
「そっちの、ええと、ケン君? 君も中に入って一緒にご飯を食べよう。――二人分の追加って大丈夫ですか?」
「は、はい。仰せとあらばすぐにでも……ですが」
「それじゃお願いします。さ、行こうか」
「待ちなさい!」
まるで己の娘のように女児を抱え、男児の手を引いて身を翻した花の背後に、切羽詰まった公瑾の声がかかった。子供の存在と花の態度への困惑と、様々な感情の入り乱れた表情は、沈着冷静を常としている彼にしては珍しく、傍観していた伯言をして色惚けってすごいなあと言わしめたほどだった。
辛うじて踏み出した一歩は、半身だけを返した花の無感動な視線によってその場に縫い止められてしまう。
「そうだ。二人とも、お父さんはこれからお仕事なんだから、いってらっしゃいの挨拶をしなくちゃ」
乾いた口は彼女の名を音に乗せようとして開かれたのだが、そこへ被さるように、形ばかりの笑みを面のように張り付けた花の言によって掻き消され、力一杯の嫌味を込めて強調した「お父さん」の単語に、公瑾の口端がひきつった。
「いってらっしゃいませ、父上」
「いってらっしゃい、ちちうえ!」
畏まって頭を垂れる男児に、にこやかな笑みで手を振る女児。一見、家族に見送られての出仕とも取れるが、母役の花の瞳に浮かぶ刺々しい光がそんな穏やかな光景を打ち壊している。公瑾には見せたことのない、――見たことのない、恋人から初めて向けられる拒絶のこころ。
「は――」
「いってらっしゃい、公瑾さん、伯言さん。お仕事、がんばってきてくださいね」
「は。ありがとう存じます」
伯言は呆然と立ち尽くす公瑾の脇にて拱手し、花へ深々と礼を取る。
語調こそやわらかく告げた花は今度こそ、二人の子を連れて躊躇せずにくるりと踵を返し、邸の中へ入ってしまった。
そして門扉は閉じられる。邸の主たる公瑾へ礼を取り、腰を折った門人と侍女の姿のみを視界に残して。
「都督、諦めて早く行きましょうよーぅ。昨夜遅くに、仲謀様と子布殿が派手にやり合っちゃったから、都督にまとめてもらわないと皆が困るんですよねぇ」
愛しいひとへと伸ばした手が虚しく空を掴む。
脱力したままのろりと身を転じた公瑾は、迎えの車を示した伯言をこの上もない恨みを込めた目で睨みつけた。
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