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三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.
2024/05/04 (Sat) 00:37:07

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No.224
2013/08/14 (Wed) 01:09:02

何か済みません丞相。
という気分です。私に格好いい丞相を書き表すのは無理だろうと悟った2013年猛暑。
いつもこの言い訳ばっか。



人工的な池を背後に、腕を広げた孟徳はにこりと笑った。
「花ちゃんから聞いたことを俺なりに解釈してみたんだけど、どうかな」
悪心など微塵も感じられないその笑顔に、けれども花は言葉を失い、馬車から降り立ったその場に茫然として立ち尽くした。
確かに言った。――元の世界では、暑くなったら海やプールに行った、と。
記憶には鮮明に残っている。プールという人工的に水をためた遊泳場で薄着になって遊んでいたと、耳慣れぬ単語に前のめりになって興味を示した孟徳に説明したことも。
満面の笑顔の孟徳の前では、無表情の花が直立で凝固していた。この季節特有の肌を焼く燦燦とした陽光は、侍人が支える大きな傘によって遮られている。だが、それが原因で花のこわばりが解けぬわけではなかった。
池の淵の一部分には明らかに手を加えましたとわかる砂の撒かれた緩やかな勾配がある。不自然極まりないそれを指摘する気力は根こそぎ奪われてしまっていた。
花の反応のなさに、孟徳は腕を下ろして首を傾ぐ。
「お気に召さなかった? 本当は、石を切り出して一部を埋めてみようかと思ったんだけど――遊泳場の、ええと、ぷーる、だっけ?」
「つ、作ろうと思ったんですか? それを?」
「だって、そうしないと足下危ないでしょ。花ちゃんが怪我しちゃうじゃない」
遊泳場を造るには時間がかかりすぎるので、湖底はくまなく掃除して危険物を取り除く方向に転換した。孟徳はにこりと笑ってそう言ってのける。彼はあっけらかんとしているけれど、花の全身には寒気が走った。ぶるりと震える身体に鳥肌が立つ。
花が腕を交差させて自らを抱きしめるようにしていると、孟徳は満面の笑みで傍らへやってきて肩を抱いた。
「いつも頑張っている花ちゃんへのご褒美だよ。さあ、思いっきり遊ぼう!」
弾んだ孟徳の声音に反して、花は強い眩暈をおぼえた。彼女の着替えのために移動手段を箱馬車にし、丞相たる孟徳の護衛を兼ねた人工池周辺の警戒に当てられた多数の兵。準備段階からどれだけの人員が割かれてきたのかと考えると、眩暈どころか意識がどこかへ飛んで行ってしまいそうだ。
権力者――お金持ちのやることは何もかもが桁外れで恐ろしい。
孟徳と並び立ちながら、脱力してふらりとした頭を倒したその先に見えた元譲と、かちりと視線が合った。すると、彼は無言のまま首を小さく左右に振る。言わずもがな、誰の諌めも孟徳を止めることはできなかったのだろう。
「泳いでみる? それとも今日は水際で遊ぶだけにする?」
俺はどっちでもいいんだけど。
ぐったりとした花の顔にも、負けず孟徳は笑みを絶やさない。
なぜだろう。――この仰ぎ見る空の如く、彼の晴れ晴れしく笑った顔を見ることはとても好きで嬉しいのに、今日はそれが憎たらしく思えてしかたがなかった。





たぶんこのあと城へ戻ったら文若さんの説教。
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