忍者ブログ
AdminWriteComment
三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.
2024/11/24 (Sun) 10:34:41

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.44
2010/09/02 (Thu) 01:55:20

お待た以下省略。

文花? というほうが正解な内容です……がどうなんでしょうか。
どうも魏軍はこんな方向ばっかりなような気がします。丞相が絡むと特に(ついに丞相の所為に……!)
頭と尻はいつもどおりで、真ん中が無駄に真面目な感。元譲さんに頑張っていただきたい気持ちはある。とてもある。だけれど、……済みませんとしか言えない。笑
お気に召していただければと思いますが、焼き鏝ドーンと来いな気持ちは常にあります。バックステップはとても得意です!(※特記事項:常に後ろ向きです)

他にも語りたいことあるんですけど明日雑記書きにきます。とりあえず寝る。まだ木曜日……もう木曜日! 休みよ早く来い!
拍手、ありがとうございました! 励みになります……!




春未だ遠かれど、膨らむ蕾みはその開くときを得ん。


夏侯元譲は机に伏す勢いで頭を抱え込んでいた。
おかしい。脳裏はその言葉に占められている。――おかしい。真面目に平穏に軍務にあたっていたはずなのに、どうしてこういった事態に陥っているのかわからない。
風の音すら聞こえず、静寂だったはずの室内には、すすり泣きが響くようになっていた。
幻聴だと思いたい。
重装備で真夏の太陽が照りつける平原に立ち尽くしているほうが万倍も良い。元譲は鼻につく墨の匂いを思い切り吸い込み、すべてを吐きつくす勢いで盛大にため息をついた。


今にも泣きそうな顔で花が現れたのは、ほんの数刻前のことだった。上掛けを握りしめ、幼い造りの顔を歪ませて扉の前に立っていた彼女を発見してしまったのは、まさに運の尽きとしか言いようがない。
なんと声をかけて良いものかと惑いはしたが、誰の目に留まるかわからぬまま回廊に放置するわけにもゆかぬ。扉を開いて入室を促すと、少女はぺそりぺそりと意気消沈した足取りで部屋に入った。
正直に言うと、あまり係わり合いになりたくない相手だった。孟徳と文若の確執を解消した働きは称賛に値すると素直に思える。だが、それ以外のことに関してはただ巻き込まれるだけの形が多いので、あまり近づきたくはないし、触れたくもないというのが正直なところだ。
色恋沙汰などは特に遠慮したいし、彼女の持ち込む内容には必ずといっていいほど孟徳が首を突っ込んで問題をかき混ぜてくれるので、解決するどころか悪化の一途を辿ることがほとんどだ。もとより女子供は苦手な部類。――要するには、至極勘弁してほしいのだけれど。
後悔とはいつの世も先に立たぬものなのである。
「……まあ、予想はしていたけど」
あいつは本当に男かね。
がっくりと頭を落としている花の前で、緋の袖を胸の前に組み合わせた孟徳がつぶやいた。
案の定、いったいどこから嗅ぎつけたのか、花を招き入れた矢先に孟徳までもがここにやってきた。犬も顔負けの鼻利きだ。しょぼくれた彼女を見るなり苦笑とも渋面ともつかぬ表情で慰めだして現在に至る。
「……ぶ、文若さんが、しっかりしたひとだっていうのは、わかっているんです。私もそういうところが、その、好き、ですし」
「いやあー、あてられちゃなあー! なあ元譲?」
「いちいち俺に振るな」
「こんなかわいい女の子が頼ってきてるんだから、ちょっとは肩入れしてやれよ。そんなふうだから、お前はいつまで経ってもムサ暑苦しいままなんだ」
「同情を誘うなら個人的な感想を混ぜてひとを貶めないでくれ」
元譲は墨の乾いた簡を、呆れたため息とともに丸めていく。しかし、ぐず、と鼻をすする音にびくりとして手の動きを止めた。
椅子に座す少女を、ちらとだけ横目で見る。上掛けの袖を引っ張り、眦に浮かぶ涙を滲む端から拭う姿を哀れだとは思うけれど、だからといって不得手なことが急激に巧くなるはずもなく、手を伸べて火傷することも避けたかった。
表情から眼差しから困惑を目一杯に露わにしている元譲へ、頭を擡げた花が極限まで潤んだ瞳を向ける。
「……わ、たし、まだ、こども、なんで、しょうか……?」
そのときに受けた衝撃といったら表現の仕様がなかった。鈍器で頭を殴られる感じとはこういうことをいうのだろうか。とんでもない発言だ。
それ以降、元譲の視界も思考もどこぞへ飛んでいってしまい、従兄弟が緋の衣を振り回して必死に少女を宥め、励まし、慰めている様など記憶にも残らなかった。


文若が邸へ帰ったのは深夜だった。
使いから戻った花が具合が悪いから邸に戻ると言い、庭に散る枯葉のように目を真っ赤にして去っていった姿が脳裏から離れず、単純な失敗を繰り返して孟徳に笑われつつも一日分の執務を辛うじて片付けることに成功したと思ったらこんな時間になっていた。あれから皺を寄せたままの眉間は今尚も開かれぬ。
足早に邸内へ入り、主人の帰りを待っていた家人に上衣を渡して花の様子を訊ねた。
「お戻りになられてからはお部屋で休んでいらっしゃいます。薬湯も、医者を呼ぶ必要もないとの仰せでしたが……」
回廊を進みながら文若は柄にもなく舌を打つ。恐縮して控える家人を下がらせてから庭に降り、彼女にあてがった奥の部屋を伺った。明かりはもちろんなく暗闇に落ちている。こぼれたため息は静謐のうちに溶けて消えた。
文若は薄暗い自室へ入って真っ黒い天井を見上げた。様子を直に見に行くべきか、休んでいるのだから明日まで待つか。花の思い煩いには心当たりが多すぎて絞りきれず、何を問い、どのような手段で憂いを払拭させればいいのかわからないことが躊躇する理由のひとつ。
彼女が遠慮などする必要はない。むしろもっと我儘を言ってもいいくらいなのだ。
再び昼間の沈んだ顔を思い出してしまい、文若は嘆息しながら扉を離れた。ひとり考えたところで答えが出るわけもなし、過ぎたることに悔いても致し方ない。しかし、許されるのならば――。
眠れるか否かを胸中に問いつつ帯に手を掛け、牀榻のある奥へと向かい出したそんなときだった。
耳を欹てなければ気づかぬほどだったが、自身のものとは異なる呼気が聞こえる。足を止め、幻聴では済まぬ明確な音を捉えた刹那、文若は懐の小刀を軽く握った。留守を狙った不届者にしては間抜けだし大胆すぎる。床に足を滑らせ、暗闇の深くなる牀榻へと注意深く近づいていった彼は、しかし寝台の上へ転がっていた物体にぽかんと口を開く破目になった。
布団も被らず、白い夜着一枚で横たわっていたのは奥の部屋にいるはずの花だった。
加減が優れぬのではなかったのか。間もなくして文若の眉間にしわが寄る。健やかな寝息に安らかな寝顔ときては起こすのに忍びない気持ちは湧くがここで流されるわけにはいかなった。
「花。――花、起きろ!」
「うぁ、は、はいっ!」
半眼のままで飛び起きた花は、首を振って周囲を見た。そして宵闇の中に立つ文若の姿を見止めると、あっという間に睡魔が去って大きな瞳が見開かれた。
「文若さん! あ、えっと、……その、……お疲れ、さまです……」
「座れ」
短い一言に、花は裾を荒く直して寝台の上に正座した。ぐっと身体を縮こまらせて膝の上で手を丸める。
「何故お前がここにいる。自室で休んでいると聞いたが、どういうことだ」
「あ、あの、その、これは、ですね」
眉間の皺が深すぎる。刹那の勢いで文若を見上げたが、気迫に負けてすぐさま視線を落した。こうなったときの文若に抵抗は無用で、言い訳は不能であることは知っている。花はぼそぼそと経緯を語りだした。
好き仲となっていることは周知のこと。だのに、腕を組めば歩き辛いからと解かれ、邸へ引き取られても部屋は別で、口づけ以上のことは何もなし。極めつけは、丞相府が移ってしばらく経つが、文若は許にあったころと変わりなく多忙極める日々ゆえなのか、結婚のけの字すら口にしてくれない。
募る不安にこころは焦る。彼のためになるようなものを何ひとつ持たず、所詮は1人前とも認められぬ小娘。結婚を前提に付き合っていたとしても、いつ別れ話が出たってなんら不思議なことはない。
なれば、――男と女の為すことなどただのひとつだ、と。そう助言を受けたので実行したと結んだ。
沈黙を貫いた文若は、言い終えて閉ざした唇を強く噛み締める花を見下ろした。眉間の皺は緩くなっていたが、それでも渋面であることに変わりはない。助言を与えた相手が容易にわかってしまうだけに何とも言い難いのだけれど。
「――良いか。物事には順序があり、道理がある」
そうして始まった文若の説教は、時間を計りかねるほど続いた。滔滔と連なって絶える気配のない戒めの言葉は、花に痺れに痺れぬいた足の感覚を失わせるほどだった。
「……このような行為に走るほど、私は不実であったということか」
区切りをつけるように重々しい息をひとつだけ吐いた後に幾分か調子を落した声で問う文若へ、花は髪を振り乱して首を振った。
「わ、たし、が、悪い、……で、す! 文若、さ、の、こと、好き、なの、に……!」
誠実である彼のこころに疑念を抱いてしまうほど膨れ上がった恐怖。惨めだし、情けない。自身をどれほど罵ろうと贖えることではない。
ついに大粒の涙をこぼした花を、文若は黙って抱きしめた。年頃の娘からの衝撃的ともいえる告白に多少の動揺はあるものの、それを蓋い隠して幼子を宥めるように髪を、頭を撫ぜてやる。
「私に非があることでお前が泣いてどうするのだ。……済まなかった。お前のこころが私の内にあると己惚れすぎていた」
腕に抱く頭が文若の科白を否定するよう微かに揺れる。――これだから困る。こういうときに責め苛んでくれねば、ますます彼女のこころがどうあっても離れぬものだと勘違いするばかりではないか。縋りつく花の頭上で文若は密かに嘆息した。
しかし、今はこれ以上のことは語らうべきではない。花は胸中で泣き続けていて正常な思考は持てぬだろう。彼女が落ち着くまで時間を置き、それから改めて話し合ったほうがずっと建設的だ。
肩に手をやって彼女と少しだけ隙間を作り、文若は未だ泣き止まぬ花を窺う。
「さあ、いい加減に泣き止んでくれ。――ああ、このままではいかんな。冷やすものを持ってこよう」
濡れそぼった花の顔を袖で丁寧に拭ってから、文若は衣の襟を握っていた彼女の手をやさしく解いて寝台の側を離れようとした。家人に言いつければ簡単だが、文若も自身を落ち着かせるわずかな時間が欲しかった。
そう思ってゆるやかに踵を返したが、花に背を向けた次の刹那には聞き捨てならぬ鈍い音に再び身を返すことになった。なぜだか寝台から花が転げ落ちている。
「――花……!」
実際のところ、退室してしまう文若を追おうとしたのだが、足が痺れて立つことすらままならぬ状態であることを忘れて転んだだけのことなのだけれど、彼に背を向けられた瞬間の悪寒は喩えようがない。
駆け寄って伸べてくれた文若の手をすり抜けるように、花は自由に出来る力を振り絞って文若の懐に飛び入った。
「ごめ、……な、さ……! ――きら、い、に、なら、ない、で……!」
文若の首に腕を巻きつけ、花はしゃくりあげながらも謝罪と懇願をひたすらに繰り返す。
膝を付いて花を抱き留めた文若は言葉もない。耳にする彼女の悲痛な声がすべての結果だ。
それほどに。これほどに彼女のこころを染めた憂いは深かったか。
嗚咽に被さるよう、文若は掻き抱いた花の名前を呼び続ける。
生まれ育った世界をより、強い想いひとつだけで傍らにあることを望んでくれた彼女を嫌いになどなるわけがない。寧ろ、甘い言葉もこころの休らいも与えてやれぬ自身こそ呆れ飽いて手を離されてしまうことこそ恐れているのに。――覚悟なぞ、とうに決めて腹を括っていたというのに。
泣き声が静まってきたころを見計らい、大きな怪我がないことを確かめてから手を貸して花を寝台へと戻した。
離れる素振りを見せると花の顔がすぐ歪むので、文若は手ずから夜着を整えて横たえさせ、小さな手巾でぐずぐずになった花の顔をそっと拭う。その間、彼女は握りしめていた文若の衣の袖を握りしめて放すことはなかった。
床へ直に腰を下ろして花と視線の高さを合わせた文若は、真っ赤になった目を見て薄く笑う。きっと明日には浮腫んで表には出られなくなってしまうだろう。
「……あと少し、待ってもらえるか」
静かな問いかけに、花は鼻をすすって文若を見つめ返す。
「また時間を置くことで猜疑の念にかられようが、この約定はけして違えまい。そのときまでに必ず現状を落ち着かせて――吉日を選び、お前を改めてこの邸へ迎えよう」
我が妻として。
その言葉をたっぷりの時間をかけて理解した花が、再びじわりと瞳を潤ませた。文若は苦笑して立ち上がり、涙を浮かべた眦に唇を寄せる。
「私の花が咲うにも、やはり春が相応しかろう」
そう言って文若は、泣きながらもぎこちなく笑う花の濡れた頬に手を添えて口づけた。


その日は、孟徳の執務室へ頻繁に官の出入りがあるというとても珍しい光景があった。
ここぞとばかりに運び込まれる竹簡があちこちに小さな山を形成している。裁可を求めて集められたそれらを、文若は入り乱れるものに一切惑うことなく下官に順序立てて整理させていた。
「……俺は何でこんな仕打ちを受けているんだろうか。なあ、文若?」
「ご自分のなされたことを善く善くお考えになられればよろしいかと。――待て。それはその並びの一番奥へ持っていけ」
「おい元譲。お前のとばっちりが俺に来たじゃないか。どうしてくれる」
壁際へ、臨時に設けられた場には、やはり孟徳と同じように書簡の山に埋もれかけている元譲が、不愉快極まった顔つきで従弟を睨んだ。この室内で唯一、大きく取られた窓が彼の背後にある。成人男性が軽く抜け出せそうなその前面に障害物よろしく配置されてしまった彼は渋面を文若へと向けた。
横顔にその視線を受けた文若は無表情を一転させ、冷たさの潜む眼差しで筆を握る武将を振り返った。
「――あれが申すには、当初、私のことを相談に訪ったのは元譲殿の下だったと」
「花に要らんことを吹き込んだのは孟徳だ」
「花ちゃんに何も言ってあげなかった奴が責任転嫁か。格好悪いことこの上ないな。だからお前は女の子にもてないんだよ」
「お前が余計なことを言わなければこんな状況にはならなかったろうが!」
どっちもどっちだろう。2人のやりとりを脇で眺めていた文若は額を押さえてため息をついた。
次第に次元の低くなっていく言葉の応酬を、文若は大きく手を打って止めさせた。
「御二方には口よりも手を動かしていただきたい」
「いいや。こうなったら言わせてもらうが、諸悪の根元は文若、お前じゃないか。あんなに可愛い子のやさしいこころを弄んでいる奴がひとりでなに涼しい顔をしているんだ」
「弄ぶとは人聞きの悪い。あれは……単に、互いに言葉が足りなかっただけです」
目を眇めて文若を見る孟徳に対し、文若は場の空気を改めるように咳払いをして背筋を伸ばした。
「丞相にはこちらの手前から迅速に裁可願います。元譲殿には彼の方の監視を。それ以外はご自由にどうぞ」
「横暴だ!」
「ご冗談を。数日かけて行うべきことを少しだけ詰め込んだだけのことでしょう。この程度、丞相ならば成せないことはありますまい」
「……俺にもやることはあるんだが」
「他の将軍に肩代わりを頼んでありますのでご心配なく」
あまりにも鮮やかな根回し振りに、孟徳は元より、さすがの元譲も開いた口が塞がらなかった。
2人の沈黙を了承と強引に受け取った文若は、この風景を日常のことと冷静に受け止めて控えていた官に後を任せるとだけ言い残し、主君に拱手して部屋を出て行った。
孟徳の喚きが聞こえてくるが、構っている時間が今日は惜しかった。
歩む回廊を照らす陽光はまだ眩しい。妨害なく執務を行えるのだ、普段よりずっと早い時間に城を出られるだろう。
――少し遠回りをして、何か土産を見繕って帰ろうか。
今朝方、案の定浮腫んだ顔で、それでも門外まで出て出仕を見送ってくれた花の姿を思い出す。
知れず穏やかな笑みを浮かべた文若は、少しだけ執務室へと戻る歩調を速めた。

 

PR
[50]  [48]  [47]  [46]  [45]  [44]  [43]  [42]  [41]  [40]  [39
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
応援中
プロフィール
HN:
はね
性別:
非公開
アクセス解析
趣味の本棚
忍者ブログ [PR]