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三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.
2024/11/24 (Sun) 11:02:02

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No.40
2010/08/11 (Wed) 23:59:22

すべりこみ!
孟花と言っていいものかどうか怪しい現実逃避小話。いやたぶん言えないな。
丞相は小さいことを気にしてたっていうから。ついでに魏じゃあれだ、真面目なひとほど辛いっていうか。文若さん筆頭に。笑
ウチではこんな感じの孟徳にしかなりませんなれません。マダオ街道一直線。最悪です。

なんとなく今書いているものの方向が見えた気がするので(遅ぇな!)ペソペソがんばってきます。シリアスモードになってがんばる。なのでこれ書きあがるまで更新ないと思ってくだ……さい……。あの、気が向いたときにここを思い出せたら見にきてやってくださ……い……。


拍手、ありがとうございました! えへらへら!




庭園を散歩するにも、護衛が付くようになった。
事情が事情だけに孟徳も強く反発することはせず、しかし納得も出来なかったようだが、押し切られてしまったらしい。
仕方がない、と言っていたのはそれが決定された翌日のこと。医師の許可が得られて、部屋近くの四阿まで行き、そこでのんびりお茶を飲みながら話を楽しんでいたときのことだった。
「花ちゃんに何かあったら大変だからね」
甘い香りのするお茶を口にしながら、そんな孟徳のつぶやきを聞いた。自嘲すら感じられる口調に花が首を傾げる。
「孟徳さんを守るための護衛なんじゃないんですか?」
先日、未遂となって事なきを得た一件を思い出しながら花が言う。
自身のような何も出来ぬ小娘がひとり消えたところでこの世界の在りようが変わるとは思わない。
言外に含まれた意を読みとった孟徳は、表現に困る顔を造った。火傷の痕が残る左手を惜しげもなく晒して髪をかき混ぜる。
美姫を数人囲っていることは花も承知だ。けれど、今の彼が誰にこころを寄せ、傾倒しているかは衆目の一致するところ。今はまだ文若に預け、侍童のようなことをさせてはいるが、いずれ誰の目にも触れぬ立場となろうことは想像に難くない。
確かに、寵姫ひとりを失ったところで軍に痛手などない。政は滞りなく行われ、日々は以前と同じように過ぎ、昔と変わらぬまま生きていくだろう。――孟徳以外は。
問いに対する返答を待つ花は、無垢な色を瞳に浮かべて孟徳を見つめたままだった。孟徳はそんな彼女に、うっすらと浮かべた笑みを返す。
「うん、まあ、そうだね。……俺のためなのかも知れないかな」
己が身ひとつをも自力で守ることが出来ぬ非力な少女は、しかし孟徳唯一の弱点となった。大軍を率い、比肩することなき地位に立つ男の、ただひとつの弱み。
笑顔で干菓子を摘み、美味しいからといって皿を奨めてくる花を見やる。
誰も彼をも信じられなくなった歪な感情をやわらかく包み込んでくれた、たったひとつの信じられるもの。こころを委ねる心地よさを思い出させてくれた娘は、もはや己の血肉のように失えぬものとなった。
そんな花を守ることは、孟徳自身を守ることと同義。もし彼女を失うようなことがあれば、徐州の二の舞などでは済むまい。
押し出された皿から干菓子の小さな欠片を取り、それを軽快な調子で口に放り込む。昔日の苦い思いを腹の底へ沈めるように、塊を思い切りかみ砕き、茶で流し込んでから、怪訝な表情を浮かべていた花へいつものように笑いかけた。
「花ちゃんは、どういうお菓子が好き? 明日の参考に聞かせてよ」
「うーん、孟徳さんが奨めてくれるお菓子はどれも美味しいから迷っちゃいます。あ、でも、これからは暑くなるから、アイスとかもいいかもしれませんね。……って、ええと、アイスっていうのはですね」
説明するための言葉を探すよう、首を傾いだ花の視線がわずかに孟徳から逸れた。そのとき、ひとつ大きく瞬きをした彼女が突然ぺこりと頭を下げる。
「花ちゃん?」
「今、あそこの柱に文遠さんがいたんです。今日の護衛は元譲さんじゃないんですね」
「あいつは別件で出動してるんだ。そうか、戻っていたのか。……ん? 花ちゃん、文遠のこと知ってたっけ?」
「はい。だいぶ前ですけど、挨拶にきてくれたんです。文若さんが紹介してくださって」
元譲と同じく大柄で、しかし武将らしからぬ落ち着いた印象を受けた人物だった。孟徳幕下の武将とは、ときおり望まれて参加する軍議の折りに顔を合わせる程度で、名を覚えるのに至極難儀しているが、彼だけ早くに顔と名前を一致させることが出来たのはそのことがあったからだ。わざわざ花個人に、自ら出向いてまで名乗ってくれたのは文遠がはじめてだった。
「あいつ……何やってんだ」
「元譲さんも大きいですけど、文遠さんも大きいですよね。ああいうひとのことを大丈夫とか偉丈夫っていうんだって、その時に文若さんが教えてくれました」
素敵な人ですよね。にこやかに言葉を連ねる花の前で、孟徳の笑みがひきつりだした。彼女の気持ちを疑うわけではないが、こうも無邪気に別の男のことを目の前で語られるのはさすがに気が気でなくなる。
「は、花ちゃんは、ああいうデカくてゴツいのが好みなの?」
「好みとかじゃなくて……、自分より大きいひとが側にいてくれるのって、安心しませんか? そういうひとが孟徳さんを守ってくれているんだなって思うと頼もしいなって」
だのに、こうして自分たちはお茶など飲んでのんびりしているのは申し訳ないのだけれど。
文遠のいる方向を見やりながら花がつぶやく。けれど、孟徳はその発言を拒絶するが如く黙り込んだ。眉間にはいつもからかっている部下に似た皺が深々と刻まれていた。
「孟徳さん? ……どうかしましたか?」
卓に投げ出されていた孟徳の手に触れ、眉尻を下げた花が身を乗り出した。純真な瞳に映る己の厳しい表情に思わず笑いがこみ上げる。
ひとを想うこと、信じること。そのどちらもひとを強くさせるし弱くもさせる。けれどそれは隠すことでも恥じることでもなんでもない。誰に対しても出来ることではないが、彼女にだけ、ならば。
ただひとりの少女にどう足掻いてもかなわぬと思い知らされる瞬間だ。これから先もずっと、彼女が傍らに在る限り感じ続けることなのだろう。
「あいす、ってなに? ここでも作れそうなもの?」
「え、あ、ええと、どうなんでしょう」
手を返して彼女の手のひらと合わせる。指を絡めてやわらかく握ると、花は孟徳の表情が綻んだことにほっと息をついて表情を緩めた。
それから城内へ戻らねばならない刻限が来るまで、彼女との会話を存分に楽しんだ。


燭台の灯りが孟徳の厳しい横顔を照らす。
戻ってきた元譲は報告のため、文遠は呼び出されて彼の前にいる。炎が揺らぐと孟徳が口を開いた。
「……報告を聞く前に、お前たちに俺からひとつ言っておく」
それに頷くこともなく、二人の武将は次の言葉を待った。
「元譲、文遠。お前たちは今後、俺の護衛に付かなくてもいい。いや付くな。他の奴を寄越せ」
「そういう訳にもいかんだろう」
「俺が許す。……そうだな、もっとこう、邪魔にならないような奴をだな」
「何か夫人のお気に障りましたか」
「いや待て文遠。――孟徳、お前まさか」
「お前たちのようなデカい奴に周りをうろちょろされたら花ちゃんの気が散るだろう! せっかくの休憩時間がもったいない! ただでさえ時間が短いんだから邪魔をするな!」
「…………は?」
形に見合わぬ間の抜けた声を発した文遠の隣では、元譲が片手で顔面を覆って俯いた。
「明日からは花ちゃんの目に留まらないような奴を配備させろ。いいな、絶対だぞ! ――元譲、お前の報告は文若のところへ持っていけ。文遠は一日ご苦労だった」
一方的に言うだけ言ってすっきりしたのか、孟徳は足取り軽く部屋を出ていった。文遠はかろうじて礼を取ってそれを見送るも、主君がいなくなってからの沈黙は如何ともしがたかった。
「元譲殿……」
「……済まんが、あいつの言うとおりにしてやってくれ」
面倒だから。元譲は顔を上げず、ただただ首を横に振るだけだった。

 

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