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三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.
2024/11/24 (Sun) 12:30:59

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No.24
2010/06/25 (Fri) 00:31:54

師匠1位おめでとう的に遅ればせながら孔花。
しかしながら祝っているとは言いがたい内容なので、許せばリベンジしたいかもしれない。

でも雑誌(買ってきた!)で描き下ろしとかあるのだし、たまにはいいでしょうと思う。あそこであの詩はずるいだろう……! くそ、手なんて握っちゃって! もっとくっつけ!(…) 花と幸せになるといい!
文若さんとか都督とかも見たいよー見たいよー。
文若さんなんかきっと肩とか抱いちゃうんだぜ。都督なんてきっとそんなんじゃ済まないんだぜ。
てか、もっとお着替えしてほしかったなー。都督なんて寝間着とか言われちゃってるくらいだし。笑 美周朗をとくと味わえ! 的な! 何かが欲しかった! そして二喬にからかわれろ。
済みません、頭のかわいそうな奴なんで触らないほうが吉だと思います。脳内(哀れなほど)軍師祭りで賑わってます。夜が似合うのは師匠だけじゃないよ! ……玄兄?(それはマズい方向で)

拍手、ありがとうございました! 元気になーる元気になーる!




「師匠!」
寝室の扉が開かれると同時に名を叫ばれた。寝台の上に小さな卓を置き、さらには硯に筆まで用意させ、今まさに広げた竹簡へ文字を書き入れようとしていたところだった。
孔明はきょとんと目を丸くして入り口を見やる。まぶしい陽光を背にし、怒りをまとった花が目尻と眉をつり上げ、およそ女人らしくない荒々しい足取りで側にやってきた。
「なんで大人しく寝ていないんですか!」
「だって、寝てるの飽きちゃったんだもん。咳ももう止まったし」
「だってじゃありません! そんなに顔色が悪いのに、仕事なんてしてないでください」
広げたばかりの書簡を花が取り上げる。その所業に、あ、と口を開けると墨を付ける寸前だった筆まで取り上げられてしまった。孔明は珍しくちょっと口を尖らせて弟子の顔を見上げた。
「ボクは元々色白なんです。それに、それは急いでいる案件なんだよ。ボクが上奏したんだから最後まで自分で仕上げたい」
「屁理屈も言い訳も聞きません。皆さんが引き受けてくれるそうですから、今からお願いしてきます」
「はぁーなぁー」
「そんな声出したって駄目なものは駄目です。……お願いですから、こういうときくらい、ゆっくり休んで養生してください」
花は丸めた書簡を胸に抱き、眉尻を下げて孔明を見やった。確かに彼はインドア派で色は白いほうだったが、今は血色が悪く青白いように見える。こうして寝台にいて夜着のままでいることも要因のひとつかもしれないけれど。
無言のまま不安を滲ませている瞳で孔明をじっと見る。普段より少しだけ潤みを持ちつつも、変わらぬ平静さをたたえた彼の目は、しかししばらくすると抵抗を諦めたように逸らされた。孔明はため息をつき、苦笑して諸手を挙げる。
「わかった、ボクの負けだ。そんな脅迫されたら従うしかないよね」
「人聞きの悪いこと言わないでください」
寝台の上のものは花には重いので、ひとを呼んで片づけさせた。すっかり物がなくなったところで孔明が横になると、まとめた書簡を抱えた彼女が扉に向かう。
「どこ行くの」
「どこって……、これを渡してきます」
「そのあとは?」
「仕事が多くなるひとのお手伝いをしようと思います。たぶん、普段と同じようになる感じですけど」
まだ読むことも書くことも途上なので、出来ることや任されることはさして多くない。だが、何に対してもひたむきな彼女の姿勢には官吏も好感を持っているようで、逆に彼女の手助けを申し出るものも少なくないことを孔明は知っている。
もちろん、面白いわけがない。
恋仲であることは一握りのものしか知らぬ。いずれは、という思いもあるが、それは当人たちが考え、決定することであって、わざわざ言い触らす必要もなければ、周りにせっつかれる謂われもない。
しかし彼女は鈍い。色恋の経験がなかったことを差し引いても、あまりにも男心を理解しなさすぎる。
寝転がった師に、花は何か問題があるのかと首を傾げた。
「手伝うのはかまわないけど、そうしたらボクは独りになるね。誰かが来たらボクが対応しなくちゃならない」
「取り次がないようにお願いしておきましょうか?」
「至急と言われたら、侍女は通してしまうよ。ボクのところに来る書簡は誰にでも見せられるようなものじゃないから、助力はもちろん期待できない。よって、寝ろと言われたボクがしなきゃならないよね?」
枕元に転がっていた竹簡を弄びながら、畳みかけるように言葉を連ねていく。意地の悪い笑みを浮かべ続ける孔明に対し、花の表情は徐々に曇っていった。
「あれ、わからない? この伏龍の弟子を名乗る君がそんなお莫迦さんじゃ困るなあ」
半眼のうえに小さく頬を膨らませ、唇を尖らせて病人を睨む弟子に、しかし孔明は滅多に見せぬやわらかい笑みを浮かべて見返した。
「ここにいてって、言ってるんだよ。ボクの看病、してくれないの?」
彼の言う言葉を飲み込むと同時に、花の顔が真っ赤に染まった。耳や首筋まで赤くなる彼女を、孔明は笑みを絶やさぬまま眺めた。
「う、あ、あの、師匠……」
「今は休めって仕事を取り上げられている一個人なわけですが」
「――こ、ここ、こう」
「失礼します」
寝台から伸ばした孔明の手が、彼女の熱くなったそれに触れる寸前のことだった。無遠慮に開かれた扉と、無粋な乱入者をかつてない鋭さをたたえた視線で睨む孔明に対し、無表情で入室してきた芙蓉は、花の姿と軍師の凶悪な顔つきから瞬時に事を察してにやりと口角を上げた。
「あらぁ。珍しく臥せられたと伺いましたのに、ずいぶんとお元気そうですこと」
「あ――ああ、あの、あのね、芙蓉姫」
「玄徳様がお呼びになっていらしたわ。仮病人なんて捨て置いて早くいらっしゃい」
「芙蓉姫! 師匠は仮病じゃなくて、まだ」
「嘘おっしゃいな。あんな溌溂とした病人がいるもんですか。――ああ、その書簡、私も持つわ」
「ありがとう。……じゃなくて! さっきだって、昨夜熱が引いたばかりなのに」
「窓を全開にして毛布も剥いでおけば簡単にぶり返すわよねぇ。あんたも気をつけなさいよ?」
「そんなことまでして身体壊す理由はないよ!」
孔明が口を挟む間もない。そうこうしている内に女性二人は喧々としつつ部屋を出て行ってしまった。扉はきっちり閉じられたのだが、不思議と虚しい寒風が床を這った。
「え、……ええー?」
伸ばした腕が、ものの見事に虚空を掴む。……病人なのに。そんなつぶやきはわきたった埃が静まった床へ切なく散った。
ぽつねんとして取り残された孔明は、花が駆け足で戻ってくるまで布団に包まり寝台の片隅で膝を抱えた。
そののち、損ねた彼の機嫌を直すのに花が苦労したことは言うまでもない。

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