三国恋戦記二次創作/初来訪の方はaboutをご一読ください
No.177
2012/06/24 (Sun) 23:59:59
※イベント当日まで、この記事がトップに来ます。
だだもれ お17
蜀プチ(含ペーパーラリー)、および、文花プチに参加させていただいてます。
【頒布物】
・花に嵐 オフ一色/A5/28P ¥200
猫と花と文若さん。 「花に嵐」を再録、削ったり足したりしました。
それと同じく猫ネタでもう1本ほど。たぶん真面目な方向になったのではと。笑
《既刊》
・磐長哀話 コピー/A5/48P ¥500 玄兄お相手の花孔明。
・花散房 コピー/A5/8P 無料配布 孟花でいつものノリ。
※孔花「藍より青し」1冊だけあったので、そっと置いておきます。
磐長~の本文サンプルは、昨年10/10の記事を参照ください。面倒くさがりですみません。
だだもれ お17
蜀プチ(含ペーパーラリー)、および、文花プチに参加させていただいてます。
【頒布物】
・花に嵐 オフ一色/A5/28P ¥200
猫と花と文若さん。 「花に嵐」を再録、削ったり足したりしました。
それと同じく猫ネタでもう1本ほど。たぶん真面目な方向になったのではと。笑
《既刊》
・磐長哀話 コピー/A5/48P ¥500 玄兄お相手の花孔明。
・花散房 コピー/A5/8P 無料配布 孟花でいつものノリ。
※孔花「藍より青し」1冊だけあったので、そっと置いておきます。
磐長~の本文サンプルは、昨年10/10の記事を参照ください。面倒くさがりですみません。
【 石に花咲く 】 文*花
身支度や食事にかかる時間を考え、文若は常に余裕を持って行動している。その余分を睡眠に充てさせるか、はたまた普段通りにしたほうが良いのか、花は文若の姿を眺めながら考えた。
わずかののち、花は抱いていた猫を床に下ろして寝台へ向かった。牀榻の側で腰を下ろし、文若の寝顔を正面から見る形で、ささやくように声をかける。
「……文若さん、時間ですけど、どうしますか?」
「起きる」
目を開けることなく応えた文若の、寝起きにしては明瞭すぎる声音に花は軽く目を瞠る。ゆっくりと瞼が上がっていって視線が交わると、彼女は目を細めて微笑んだ。纏っている若草色の衣と同じような、淡くやわらかい容貌に、今までの不快さが嘘のように晴れて文若の口元が緩む。
「おはようございます。今日も晴れていて、いい天気です」
「ああ、おは……っ!」
「こ、こら! どうしてそういうことをするの! お腹に飛び乗るなんて駄目でしょう! めっ!」
どっしりと文若の腹に飛び乗った猫を、花は慌てて抱き上げ、ちっとも反省していないような顔を覗き込みながら叱る。無防備であったゆえに痛みが強く、一瞬だけ呼吸が止まった。なかなか起き上がれずにいると、花は猫を床に下ろし、腹に置かれた文若の手に手のひらを重ねた。大丈夫かと繰り返し問いかけられるが、彼は何とも言わずにため息をつく。
あれにとって花は絶対的な存在なのだろうが、では自分はどういう位置に据えられているのかと疑問が湧いた。しかし、のんびり毛繕いをしだした姿を見ていると、それを探究する気にはなれなかった。
花の手を借り身支度を済ませ、食事を二人だけで摂り、少しの食休みを経て邸を出る。猫が不在であったのは食事中のみで、あとは気がつけば花の足元にいたり、彼女がその腕に抱きあげていたりするので、邸にいる間に目につかぬ時はほぼ皆無に等しい。
門へ向かうまでにも、猫は立てた尾を揺らしながら花についてきている。見送るためだと彼女は思っているようだが、そんな殊勝なものではなかろう。――邪魔者が確実にいなくなるのを見届けるためではあるまいかと文若は踏んでいる。
実際、それは見送るときの態度に如実に表れていた。
「いってらっしゃい、文若さん」
胸が温かくなるような微笑みをする妻は、少しだけ腰を折ったのち、胸の前で小さく手を振った。それから抱いた猫の前足を取って同じようにする。文若を見る金色の目はまるで興味がないというように半分閉じていて、垂れ下がった尾は左右ではなく前後に振られ、早く行ってしまえと言わんばかりだった。
早く子を儲け、花の意識を猫から逸らすべきなのだろうか。けれども、授かりものである以上、文若や花がそう望んだところで一朝一夕に叶うものではない。しかし――。
城へ向かう車の中で、なぜにたかが猫一匹を相手にこのようなことで悩まねばならないのだろうか。だが人知の及ばぬことだといって手をこまねいているわけにもいかぬ。
思いつく限りの対処法を練りながら、文若は数え切れぬほどのため息をもらした。
身支度や食事にかかる時間を考え、文若は常に余裕を持って行動している。その余分を睡眠に充てさせるか、はたまた普段通りにしたほうが良いのか、花は文若の姿を眺めながら考えた。
わずかののち、花は抱いていた猫を床に下ろして寝台へ向かった。牀榻の側で腰を下ろし、文若の寝顔を正面から見る形で、ささやくように声をかける。
「……文若さん、時間ですけど、どうしますか?」
「起きる」
目を開けることなく応えた文若の、寝起きにしては明瞭すぎる声音に花は軽く目を瞠る。ゆっくりと瞼が上がっていって視線が交わると、彼女は目を細めて微笑んだ。纏っている若草色の衣と同じような、淡くやわらかい容貌に、今までの不快さが嘘のように晴れて文若の口元が緩む。
「おはようございます。今日も晴れていて、いい天気です」
「ああ、おは……っ!」
「こ、こら! どうしてそういうことをするの! お腹に飛び乗るなんて駄目でしょう! めっ!」
どっしりと文若の腹に飛び乗った猫を、花は慌てて抱き上げ、ちっとも反省していないような顔を覗き込みながら叱る。無防備であったゆえに痛みが強く、一瞬だけ呼吸が止まった。なかなか起き上がれずにいると、花は猫を床に下ろし、腹に置かれた文若の手に手のひらを重ねた。大丈夫かと繰り返し問いかけられるが、彼は何とも言わずにため息をつく。
あれにとって花は絶対的な存在なのだろうが、では自分はどういう位置に据えられているのかと疑問が湧いた。しかし、のんびり毛繕いをしだした姿を見ていると、それを探究する気にはなれなかった。
花の手を借り身支度を済ませ、食事を二人だけで摂り、少しの食休みを経て邸を出る。猫が不在であったのは食事中のみで、あとは気がつけば花の足元にいたり、彼女がその腕に抱きあげていたりするので、邸にいる間に目につかぬ時はほぼ皆無に等しい。
門へ向かうまでにも、猫は立てた尾を揺らしながら花についてきている。見送るためだと彼女は思っているようだが、そんな殊勝なものではなかろう。――邪魔者が確実にいなくなるのを見届けるためではあるまいかと文若は踏んでいる。
実際、それは見送るときの態度に如実に表れていた。
「いってらっしゃい、文若さん」
胸が温かくなるような微笑みをする妻は、少しだけ腰を折ったのち、胸の前で小さく手を振った。それから抱いた猫の前足を取って同じようにする。文若を見る金色の目はまるで興味がないというように半分閉じていて、垂れ下がった尾は左右ではなく前後に振られ、早く行ってしまえと言わんばかりだった。
早く子を儲け、花の意識を猫から逸らすべきなのだろうか。けれども、授かりものである以上、文若や花がそう望んだところで一朝一夕に叶うものではない。しかし――。
城へ向かう車の中で、なぜにたかが猫一匹を相手にこのようなことで悩まねばならないのだろうか。だが人知の及ばぬことだといって手をこまねいているわけにもいかぬ。
思いつく限りの対処法を練りながら、文若は数え切れぬほどのため息をもらした。
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